新しい愛のカタチ。中高年の再婚で事実婚を選ぶメリット・デメリットとは

離婚や死別、未婚でも辛い別れを経験してきた中高年世代。再び誰かと人生を歩みたいと思っても、なかなか踏み出せないこともあります。また婚姻関係を結ぶ気持ちにならない、周囲のしがらみが多いなど、理由は様々。このことからも、中高年世代の選択肢のひとつとして「事実婚」を考えるケースが増えてきています。

 

事実婚とは

そもそも事実婚とはどのようなものでしょうか。婚姻関係とはどのような違いがあるのか、事実婚の手続きやリスクとは何かを考えてみましょう。

事実婚ってどんな状態?

互いに結婚の意思があるが入籍せずに、法律婚上の夫婦のように長期間の共同生活をしている関係のことをいいます。例えば、

  • 共同生活をしている
  • 両者が婚姻の意思を持っている
  • 社会的に夫婦と認知されている
  • 公的手続きでも内縁関係を表明している

など、婚姻関係を結んでいないだけで、夫婦と何ら変わりない状態のことを指します。

 

日本と海外で比較する事実婚の割合

実際に、日本で婚姻関係を結んでいない場合の子供の割合はどのくらいなのでしょうか。

「生労働白書-人口減少社会を考える-」では、婚外子の割合を発表しています。外国と日本での比較はこちら。

日本………………2.11%

英国………………43.66%

フランス…………49.51%

ドイツ……………29.96%

スウェーデン……55.47%

アメリカ…………38.50%

(※2006年における、結婚していない母親からの出生率が全出生数に占める割合を比較したもの)

図表1-4-4  婚外子の割合の比較

なんと、日本は先進国で一桁という結果に! まだまだ浸透していないし、世間では認められていないということを物語っていますね。

 

事実婚が認められるには?

事実婚であると証明するには、2つの要件を満たすことが必要になります。

  • 男女双方に婚姻の意思がある
  • 夫婦として共同生活を続けている事実がある

婚姻の意思とは、社会的に夫婦として認められる関係をつくる意思のこと。お互いにたすけ合い、貞操義務を守り、夫婦としての共同生活を続ける意思の有無が必要になります。単なる恋愛関係や、愛人関係などは事実婚とは認められません。

何年以上の共同生活から、事実婚であるという基準はありません。事実婚の成立が問題となったときは、実際の状況を踏まえて判断されます。

 

事実婚が認められるためにやっておきたいこと

法律婚のように戸籍上の届出をしない事実婚を認めてもらうには、事実婚の事実を証明することが可能になることを積み重ねておく必要があります。

  • 住民票の続柄の欄に「妻(未届)」などの記載をする
  • 一方が他方の被扶養者となる健康保険での取り扱い
  • 生命保険契約の保険金受取人がどちらか
  • 住宅の賃貸借契約などにおける記載
  • 夫婦としての行事(挙式、夫婦として参列、親族・知人・職場関係者に配偶者として紹介している事実)
  • 「事実婚の契約書」を作成する

 

結婚と事実婚の違い

結婚と事実婚の違いは、具体的に何でしょうか。

婚姻を結ぶことで、法律的に義務が発生します。もう経験済みの方も、どのような義務があるかをおさらいしてみましょう!

 

姓の統一

夫婦別姓が認められていない日本では、婚姻関係を結ぶ二人、どちらかの姓(苗字)に統一をする義務があります。中高年まで独身の場合、互いに責任ある仕事や地位の人も居るので、姓を統一することが難しいケースも見られ、姓を変えずに済む事実婚を選択する場合も。

 

同居義務

法律では、婚姻関係を結ぶと同居義務が発生します。お互いが同意の上で、別居婚を選択しても問題はありませんが、相手が同居を求めているにも関わらず、別居を強いると、義務違反として不利になります。

 

貞操義務

結婚すると貞操義務が発生します。夫婦はお互いに、配偶者以外の異性と性交渉を行ってはいけません。婚姻関係を結ぶ以上、守らなければならない最低限の義務の一つです。万が一不貞を働いた場合、慰謝料を請求されることがあります。

事実婚でも貞操義務は発生します。婚姻関係にないからといって浮気をした場合、慰謝料を請求されてしまうのでご注意を。

 

婚姻費用分担義務

結婚生活にかかる費用は夫婦で分担しなければいけないという、民法第760条で規定された、婚姻費用分担の義務があります。

夫婦の片方が高収入で、片方は収入が低収入の場合、高収入の方が生活の上で経済的な負担が大きいということになります。どんなに自分のお金を自由に使いたいと感じても、原則、婚姻費用は分担しなければなりません。たとえ別居しても婚姻関係を結んでいたら、この義務は果たさなくてはなりません。

この義務は、事実婚でも変わりません。ですが、事実婚の場合、同居している場合に限り適応されます。別居した場合には、婚姻費用の分担はできません。

 

助け合う義務

民法第752条では「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。」と定められています。夫婦は協力し互いに助け合い、扶助する義務があるということになります。

これは経済面だけではなく、互いに愛し合い、困ったときには心に寄り添い、一緒に解決して行くと言うこと。家族になるのですから、当然でしょう。事実婚でもそれは変わりません。

 

お互いが相続人

婚姻関係を結ぶと、お互いが相続人になります。どちらかが亡くなった場合、残された配偶者は、これを相続する権利があります。もし前の結婚で子供がいれば、その子供の相続分が減ることになります。

一方事実婚では、相続問題はなくなります。事実婚で子供ができた場合、認知しなければ相続問題は発生しません。もし、お互いにその方法で合意できているなら問題はないでしょう。生まれてくる子供のことを考えた上で、お互いが納得できるのであれば面倒なことがなくなります。

 

関係解消後の財産分与

婚姻関係を結ぶと、離婚時には財産分与が発生します。これは、事実婚を解消した場合でも同様です。事実婚時代に共同で築いた財産であれば、すべて分与の対象となる可能性があります。ですが、事実婚の関係を証明できることが前提条件になってきます。

また、年金分割は、事実婚の場合期間を証明しにくいため、妻が扶養に入っていた期間のみが対象となります。

養育費は婚姻関係と同様に発生しますが、子供を認知していた場合のみになるので、注意しましょう。

 

住民票の記載の違い

住民票などの公的書類の記載が、婚姻関係と事実婚では変わってきます。事実婚を証明する必要性がない場合、続柄欄には同居人と記入するだけでOK。また事実婚を証明したい場合には、続柄の欄に「妻(未届)」と記入しましょう。

 

内縁と事実婚の違い

よく耳にするのが「内縁関係」。内縁と事実婚の違いは何でしょうか。

基本的に内縁関係と事実婚は、同じ意味を指します。互いに結婚の意思があるが入籍せずに、法律婚上の夫婦のように長期間の共同生活をしている関係のことをいいます。

基本的にどちらの場合も、同居や貞操義務、扶助義務などの責任を負うことになり、それらが果たされていればある程度の保護を受けることが可能です。ただし、きちんとそのことが認められた場合のみですが。

 

事実婚のデメリット

これだけ見ると、事実婚の方が簡単で良いもののように思うかもしれません。ですが、良いことばかりでは無いのも事実。事実婚にはデメリットもあります。

 

世間にまだ認められにくい

日本ではまだ、事実婚を婚姻関係に準ずるものだとの認識が薄く、世間から認められていないことが多いのが現状です。事実婚や内縁と聞くだけで、良くない印象を持つ人が多数存在することを、覚悟しなくてはなりません。

 

相続時の税金が多額

婚姻関係を結んでいない場合、法定相続人にはなれませんが、遺言や、特別縁故者になって相続の権利を得る方法があります。

ただ、婚姻関係を結んだ場合より、多額の相続税を支払うことになります。相手が資産家であればあるほど、かかる税金も多額になります。

婚姻関係を結んでいたら、配偶者控除を適用でき、1.6億円までは非課税で相続することが可能になります。配偶者控除が受けられるのは、次の条件を満たすと適用されます。

  • 戸籍上の配偶者である
  • 相続税の申告期限までに遺産分割が完了している
  • 申告書(相続税の)を税務署に提出する

戸籍上の配偶者ではない事実婚では、この配偶者控除が適用されません。

 

配偶者特別控除の適用外

配偶者控除が受けられないため、税金を減らすことができません。事実婚でも扶養に入ることは可能ですが、事実婚は結婚よりも優遇措置がされません。

 

社会保険の手続きが面倒

事実婚の場合、社会保険の手続きに手間がかかります。事実婚でも社会保険が受けられることに変わりはありませんが、事実婚である事実を、住民票の続柄などで証明する必要があります。

 

子供との関係が複雑になる

事実婚で子供ができた場合、父子関係が複雑になります。もし、産まれてきた子供に、遺産を相続させたい場合、その子供を認知しなくてはなりません。

また、事実婚で産まれた子供の場合、親権は母親のみにあります。たとえ実父であっても、親権は母親のもの。ですから、事実婚の子供は、父親との姓が別姓になります。

その子供を認知していても、父親の戸籍に入ることは不可能ですが、裁判所に届け出をし、戸籍を父親に移すこと自体は可能です。共同親権を持つことはできません。

 

お互いで決めた契約ごとの取り消しができない

婚姻を結んだ夫婦間で取り決めた契約は、婚姻中いつでも取り消すことができます。これは、民法754条の夫婦間の契約の取消権というもので、夫婦間の契約は婚姻中なら、いつでも夫婦の一方から取り消すことが可能とされています。ですが、事実婚の場合、契約の取消しが認められません。軽はずみな契約には、注意しましょう。

 

中高年で事実婚を選ぶメリットって?

デメリットを聞くと、事実婚にメリットが無いような気持ちになるかもしれません。あえて事実婚を選ぶメリットはあるのでしょうか。

事実婚のメリット

もちろん自分自身の姓を変えなくていいということが一番のメリットでしょう。

  • 免許証など、名義変更が不要
  • 親族のしがらみから離れた場所で居られる
  • 対等な関係での生活
  • 別れても戸籍に履歴が残らない

中高年になると、今まで長く付き合ってきた姓を変えることが煩わしく感じることもあります。まして、離婚歴があればその手続きの面倒くささにうんざりしているかもしれません。別姓で居られることだけでも、メリットと感じる人も多く居ます。

年齢を重ねてきたからこそ、今更自分の姓を変えたく無い。様々な人生経験をしてきたからこそ、このままの姓で居たい、そう思っても不思議ではありません。

 

中高年の事実婚実例

法律婚が根強い日本で、実際に事実婚を選んだ人に事情を聞いてみました。

 

亡くなった際の負債を免れるため

都内に住むAさん(57歳・女性)は、一度も婚姻を結んだ経験は無し。相手はバツ2だったこともあり、内縁として20年近く連れ添ったそうです。

入籍をしなかった理由の一つに、相手には多額の借金があったこと。その後相手は病気になり、最後は自宅で看取ったそう。負債があることから、親類関係と疎遠でしたが、亡くなってから、負債は疎遠だった親類関係者や前妻の子供にまで駆け巡ったそうです。入籍していなかったAさんには、その負債が巡ってくることはありませんでした。

確かにそういった事情を抱えていても、一緒に過ごしたい場合、あえて入籍をせずに過ごすことで、相手を守ることにもなりますものね。

 

事実婚の解消

もし、離婚と同様に事実婚を解消したいと思った場合、手続きは必要なのでしょうか。

 

戸籍上の手続きは必要ない

事実婚を開始した際に、戸籍の届出手続が必要ないのと同様に、解消する場合も手続きを必要としません。お互いの意思のみで、関係は終了できます。

 

金銭問題

法律上の離婚問題と同様に、お互いの共同財産の行方を決める必要があります。また、どちらか一方に、事実婚解消の原因がある場合、慰謝料が発生します。

 

保険や住民票

住民票や社会保険など、実務上の手続きを行っていた場合、法律上の婚姻同様に手続きが必要になることがあります。

 

事実婚も家庭裁判所を利用できる

事実婚の解消で、モメたり条件が決まらない場合、家庭裁判所を利用することが可能。ですが、婚姻を結んでいようと、事実婚だろうと、裁判は面倒で時間もかかります。関係を始める前に、ある程度の決め事はしておいた方が無難でしょう。

 

新しい愛のカタチとして事実婚を視野に入れてみる

中高年になると、様々な経験をしてきています。離婚の泥沼騒動も、面倒な手続きもうんざり。そう思って、一歩踏み出せないのであれば、新しい愛のカタチとして事実婚を考えてみてはいかがでしょう。せっかくの人生、新しいパートナーと新しい関係を築いてみては。

 

どうか素敵なパートナーに巡り会えますように!